設立にあたり

村木 厚子 氏

高知大学卒業後、労働省(現厚生労働省)に入省。障がい者のトライアル雇用の制度化、障害者自立支援法の策定等に取り組む。'09年「郵便不正事件」により逮捕されるが、'10年9月無罪が確定した。

支えがないために罪に問われる障がい者がいます。

2009年、郵便不正事件で逮捕され、取り調べや勾留、そして裁判を経験しました。取り調べで自分の言い分をしっかり貫くこと、公判という場で自分の意見をきちんと述べることは想像以上に難しいことです。いったん、被疑者、被告人という立場におかれた人が裁判で無罪を勝ち取ることの難しさを実感しました。

障がいを持たない私でも、こんなに悪戦苦闘したことを思い返すと、知的な障がいのある人をはじめ、コミュニケーションに障がいがある人が、きちんとした取り調べや裁判を受けることができているのだろうか、そんなことが不安になりました。

そうしたときに、障がいがあるためにきちんと言い分を言えない、障がいが理解されていないがゆえに、間違った受け止めをされる、そんなケースがたくさんある、そして、そういう問題の解決に取り組もうという動きが司法や福祉の関係者の協力で始まっていると聞かされました。

障がいのある人は人口のおよそ5%と言われています。一方、刑務所の入所者の約2割は知的障がいがあるという調査結果があります。刑を終えたあとの居場所がみつけられず犯罪を繰り返す人も多いといいます。「障がい」という問題はまだまだ社会で理解されていません。それにもう一つ「触法」という要素が加わる分野は、本当に日の当たりにくい分野だと言えるでしょう。

そこで、郵便不正事件に関する国家賠償請求で得たお金を、そういう人たちの支援をするための活動に使っていただこうと思い立ちました。

障がいのある人が適正な取り調べを受け、公正な裁判を受けられる、罪を犯してしまった障がい者が社会に復帰し二度と罪を犯さずに済む、さらには、障がいゆえに犯罪を犯さざるを得ない状況に追い込まれる人がなくなる、そういう社会をみんなで創っていきたいと思います。

2012年7月

 

「罪に問われた障害者」がおかれた状況

知的障がい者などコミュニケーションに障がいを抱える人たちは、支援体制が不十分のまま「取り調べ」や「裁判」の場におかれています。

「読む」「聞く」「自分の考えを伝える」のコミュニケーション能力に障がいがある人たちの特性

  • 捜査員に迎合しやすく、誘導されやすい可能性がある
  • 伝えたいことが、捜査員に上手く伝わらない
  • 刑事手続上必要な司法手続きの諸権利が正しく伝達されていない
  • 捜査員に迎合しやすく、誘導されやすい可能性がある
  • 伝えたいことが、捜査員に上手く伝わらない
  • 刑事手続上必要な司法手続きの諸権利が正しく伝達されていない

この人たちにとって「取り調べ」や「裁判」は、海外旅行で言葉が通じない状況と似ています。

刑務所にいる受刑者の5分の1が知的障がい者(疑い含む)というデータがあります。

自らの居場所がなく、刑務所への出入りを繰り返す「負」の回転ドア現象を引き起こしています。

事業形態

公益事業としての中立公平性を重視し、基金の運用にあたっては、各分野の有識者で構成される運営委員会、企画委員会を設けます。

「共生社会を創る愛の基金」は社会福祉法人南高愛隣会における公益事業として実施いたします。

社会福祉法人 南高愛隣会

「共生社会を作る愛の基金」事業

運営委員会

企画委員会

社会福祉法人 南高愛隣会とは

1977年に設立された社会福祉法人(本部:諫早市)。長崎県下で障害福祉事業を展開し、様々な障がいを持つ約1,000名が利用しています(2023年12月現在)

南高愛隣会は、「地元に帰りたい」「働きたい」「結婚したい」など、障がいある方の「~したい」という願いをかなえる為に、制度や常識にとらわれず、チャレンジをつづけています。

社会福祉法人 南高愛隣会 : https://www.airinkai.or.jp/

企画委員・運営委員

運営委員会(50音順、敬称略)

浅野 史郎 (株)土屋
荒 中 弁護士
大熊 由紀子 元朝日新聞論説委員
坂本 由紀子 学校法人ねむの木学園監事
櫻井 龍子 元最高裁判所判事
清水 義悳 更生保護法人 清心寮 理事長
高橋 陽子 公益社団法人 日本フィランソロピー協会 理事長
田島 光浩 社会福祉法人 南髙愛隣会 理事長
但木 敬一 弁護士
辻 哲夫 東京大学教授
古都 賢一 社会福祉法人全国社会福祉協議会副会長
堂本 暁子 女子刑務所のあり方検討委員会
戸苅 利和 公益社団法人日本看護家政紹介事業協会会長
古川 康 衆議院議員
松矢 勝宏 東京学芸大学名誉教授、全日本特別支援教育研究連盟顧問
山本 譲司 作家
芳野 友子 日本労働組合総連合会 会長

企画委員会(50音順、敬称略)

今福 章二 中央大学客員教授
内山 登紀夫 福島学院大学 教授
川島 志保 弁護士
北岡 賢剛  
幸島 聡 更生保護法人 日本更生保護協会 常務理事
酒井 龍彦 社会福祉法人 南高愛隣会 専務理事
濱崎 伸洋 (株)電通グループ ディレクター
武田 牧子 一般社団法人 障がい者総合支援機構相談支援事業所 Serecosu新宿
名執 雅子 日本司法支援センター理事
野澤 和弘 植草学園 副学長
堀江 まゆみ 白梅学園大学 教授

※企画委員にはその他法務省・厚生労働省からもご参加いただいています(2023年12月現在) 

顧問(敬称略)

村木 厚子 社会福祉法人 全国社会福祉協議会 会長
村木 太郎 社会福祉法人 南髙愛隣会 理事

設立趣旨

共生社会を作る愛の基金リーフレットは現在作成中です